CFスタートアップパートナーズ

2026年4月号
CVC投資戦略研究会
Monthly Report

Contents

  • 巻頭言 ~オープンイノベーション促進税制の令和8年度改正とCVC投資への影響~
  • 今月の注目スタートアップインタビュー「Turiya Softech Pvt. Ltd.」
  • 今月の注目スタートアップインタビュー「株式会社SUN Reality」
  • 豆知識 「AIはホワイトカラーを侵食し、次に現場へ向かう」

巻頭言

株式会社CFスタートアップパートナーズ
代表取締役出縄 良人(公認会計士)

1 オープンイノベーション促進税制とは オープンイノベーションとは企業がスタートアップや大学その他の研究機関等との協業によって新製品・新サービス、新事業を創出する活動を指します。特に既存事業の維持発展にリソースを割かれ、研究開発部門も既存製品の改良、発展で1を10とする開発は得意とするものの、ゼロから1を生み出すイノベーションが社内だけでは起こしにくくなってきています。そのような状況下で注目されているのがオープンイノベーションです。特に新たなアイデアや画期的な技術をもつスタートアップとの協業によるオープンイノベーションは、大企業とスタートアップの相互にとって有意義です。大企業にとっては新事業創出のスピードと成果を上げる手段となり、スタートアップにとっては大企業の有する経営資源を活用して成長を加速できるメリットがあります。CVC投資は資本参加を通じてスタートアップに必要資金を供給しつつ連携を強化するオープンイノベーションの最有力の手段です。オープンイノベーション促進税制は、まさにCVC投資の促進を目的としており、CVC投資の本質を捉えた税制ということができます。

オープンイノベーション税制は2014年に時限立法として租税特別措置法に定められました。一定の要件を基に、企業がオープンイノベーションを目的として設立10年以内のスタートアップ企業が新たに発行する株式を取得する場合、取得価額の25%を損金に算入できる制度です。対象となる出資の最低額は大企業で2億円(今回の改正で1億円から引引き上げ)、中小企業で1千万円とされています。

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上記の新規出資型に加え、令和5年度の税制改正で、M&A型が追加されました。大企業がスタートアップの既発行株式の過半数を取得する場合に、取得価額の25%を損金に算入できる制度です。M&Aでスタートアップの株式を取得する企業に対する税制優遇で、スタートアップ投資のM&AによるEXITに資するものです。

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IPOによるEXITが狭まる環境下で、海外に遅れをとっているM&AのEXITを促進する税制優遇措置と言えましょう。

2 令和8年度のオープンイノベーション促進税制の改正 今年度の税制改正において、オープンイノベーション促進税制については主にM&A型の要件について、大幅な変更が行われました。従来、M&A型のオープンイノベーション促進税制を適用するには、発行済株式数の50%超を取得することが要件でしたが、今回の改正では、一定の要件を満たした場合には、段階的に取得すること場合も、適用できることになりました。CVC投資としてマイノリティ出資を行い、その後、買い増しによって50%超とする場合でも税制優遇を受けることができ、M&Aに発展するCVC投資に資する改正となっています。なお50%超の取得の場合は、所得控除は投資金額の25%ですが、段階的取得の場合には、20%となります。その他、今回の主な改正点は以下の通りです。

・適用期限を令和10年3月31日まで延長

・新規出資型において、大企業からスタートアップへの投資下限を1億円から2億円に引き上げ

・M&A型において、3年以内に議決権の過半数を有することが見込まれることを前提に、段階的取得を容認。最低投資額は3億円。投資額の20%について損金算入可(ただし新規出資型の併用は不可)。

・M&A型の一括取得の場合の最低投資額を5億円から7億円に引き上げ

・M&A型の投資先スタートアップが合併により解散した場合の特別勘定の取崩について、一括取崩のみから5年間の均等取崩による段階的益金算入を容認

 スタートアップへの投資額について損金に算入するにあたっては「特別勘定」として計上しますが、この特別勘定については新規出資型の場合、保有株式の売却等においてのみ取崩して益金に算入され、保有する限りは益金となることはありません。一方、M&A型の場合は、以下により益金に算入する必要があります。

  1. 取得から5年が経過した場合(成長投資・事業成長の要件を満たす場合を除く)

  2. 議決権の過半数を有しないこととなった場合

  3. 経済産業大臣の証明がされない場合

  4. 配当を受けた場合

  5. 対象法人を合併法人とする合併によりスタートアップ企業が解散した場合

3 オープンイノベーション促進税制のCVC投資への影響  オープンイノベーション促進税制については、新規出資型について、マイノリティによる資本参加を前提とするCVC投資の促進につながってきました。今回の改正では、M&A型の段階的取得を認めることで、CVCがオーナーから一部の株式を取得する場合にも適用できることとなりました。M&Aを前提とするCVC投資を、オープンイノベーションによる新事業あるいは新産業の育成のためのあるべき姿として税制が組まれていることは、好ましいことと言えましょう。先月号で述べたIntel Capitalでは、CVC部門の投資先のEXITの10%程度を事業部門からのM&Aが占めており、CVCが有望なM&A先を発掘する事業戦略上のリターンを目的としつつ、EXITによってCVC部門として財務リターンも得ているモデルを紹介しました。オープンイノベーション促進税制では、そもそも財務リターンを目的とす

る純投資は対象外とされています。純投資目的のVCによるスタートアップ投資と比較すると、既存企業がオープンイノベーションの目的のもと、自らの経営資源を生かして新産業を育てる側面を持つCVC投資。オープンイノベーション促進税制は、CVC投資の社会的意義に鑑み、それを強く後押しする政策であることは間違いありません。

今月の注目スタートアップインタビュー①「Turiya Softech Pvt. Ltd.」

産業からインテリジェンスへ:Turiya Softechが描く産業向けデジタルトランスフォーメーションの未来

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本記事では、Turiya Softechの創業者兼CEOである Mansha Devi (マンシャ・デヴィ)氏に、SAPコンサルティングから始まり「Society 5.0」や「産業向けデジタルトランスフォーメーション」というビジョンがどのように現在の事業へと発展していったのか、その製品ポートフォリオの裏側、そして独自のAI監視技術と防爆型3Dスキャンを用いたデジタルツイン技術を強みに、日本や中東など海外展開を進める同社の取り組みと今後の展望について伺っています。 Turiya Softechは、CFスタートアップパートナーズが運営するまきチャレ2025でファイナリストに選出されています。 ※本インタビュー企画・記事執筆は株式会社CFスタートアップパートナーズよりEXPACT株式会社が委託を受け、実施しております。

Turiya Softechのルーツ、ミッション、そしてコアバリュー

ーTuriya Softechの設立の経緯と、起業のきっかけについて教えていただけますか?

マンシャ・デヴィ氏: 当社の歩みは、2017年12月に、夫のDurga Kumarと共に明確なビジョンを携えて米国からインドへ帰国したところから始まりました。私たちは二人とも、世界の産業基盤を支えるエンタープライズソフトウェアである「SAP」において深い専門知識を有していました。当時、インド国内の産業クライアントに対し、このニッチで高度なSAPコンサルティングを提供することに大きな可能性を感じ、2018年半ばに本格的に事業をスタートさせました。

当社の進化において特徴的なのは、時間をかけて意図的に「トランスフォーメーション(変革)」を遂げてきた点です。初期のSAPコンサルティングを皮切りに、AIや機械学習を活用したプロダクト開発、エンタープライズ向けアプリケーション設計、そして高度なエンジニアリングサービスへと事業の軸足を移してきました。 そして2022年、私たちは大きな節目を迎えました。単なるソフトウェア開発会社から、総合的な「デザイン・エンジニアリング企業」へと脱皮したのです。この転換によって、全く新しい市場を切り拓くことができました。さらに2025年5月には、産業プラント向けのデジタルツイン技術に特化した姉妹会社「Turiya 3D」を設立しました。現在、この2社は一つのチームとして、互いを補完し合う強力なシナジーを生み出しながら、共通のリーダーシップのもとで事業を展開しています。

ー御社の事業の指針となるコアバリューとミッションは何でしょうか?

マンシャ・デヴィ氏: 私たちが掲げる哲学は非常に明確です。それは「インクルーシブ・グロース(包括的な成長)」です。これは自社の利益だけを意味するものではありません。パートナーやクライアントなど、私たちと共に歩むすべての人々と共に成長していく。これが私たちの信念です。そして、そのすべての活動の根底には、揺るぎない「誠実さ(インテグリティ)」という基盤があります。 一方で、私たちのミッションはさらに特徴的と言えるかもしれません。私たちは、テクノロジーをただ導入するためではなく、「価値主導型のソリューション」を提供することを目指しています。IT業界は往々にして複雑な最新技術に目を奪われがちですが、私たちはあえてそれとは逆のスタンスを取っています。 もし、よりシンプルで費用対効果の高い解決策が存在するならば、たとえ当社の業務範囲(売上)が縮小することになっても、迷わずそちらを推奨します。私たちがチームに常に言い聞かせているのは、「自分たちに技術があるから」という理由だけで提案してはならないということです。より低コストで優れた代替案があるのなら、そこに焦点を当て、クライアントに「実質的なメリット」をお届けする。この精神は単なる理想論ではなく、私たちの最大の競争優位性そのものなのです。

Turiya Softechの事業内容とその重要性

ーわかりやすく言うと、Turiya Softechは具体的にどのような事業を展開し、顧客のどのような課題を解決しているのでしょうか?

マンシャ・デヴィ氏: 当社は、「複雑な産業システム」と「デジタル・インテリジェンス」が融合する最前線で事業を展開しています。主な顧客は、石油・ガス、化学、海洋、そして製薬といった分野のプラントを所有・運営する企業です。これらの業界において、データ主導の意思決定ができるかどうかが、円滑で安全な操業を続けられるか、あるいは致命的な大事故を招くかの分水嶺となります。 ソフトウェア領域においては、SAPのニッチなモジュールをはじめ、AIや機械学習アプリケーション、IoTインテグレーション、BI(ビジネスインテリジェンス)ダッシュボード、そしてカスタムアプリ開発に至るまで、エンドツーエンドのエンタープライズソリューションを提供しています。

一方、エンジニアリング領域では、「Turiya 3D」を通じて3Dレーザースキャンサービスを提供し、産業施設全体のデジタルレプリカ(デジタルツイン)をミリ単位の精度で構築しています。 さらに、インドの公共企業(PSU)や個別のクライアントに対しても、ウェブサイト制作やモバイルアプリ、カスタムソフトウェア開発など、それぞれの要件に応じたソリューションを幅広く手掛けています。私たちが目指しているのは、組織の規模に関わらず、すべてのクライアントがテクノロジーを活用して独自の運営課題を解決できるようにすることです。

ー現在開発を進めている具体的な自社プロダクトはありますか?

マンシャ・デヴィ氏: はい。なかでも、将来的な投資価値と社会的インパクトという観点から、私たちが非常に期待している2つのプロダクトがあります。 一つ目は「BitGuru」です。これは、大規模な産業組織における「入札・購買プロセス」の自動化に特化したAIプラットフォームです。プラントオーナーが提案依頼書(RFP)や見積依頼書(RFQ)を発行すると、BitGuruが高度なアルゴリズムを用いて、ベンダーから提出された提案内容を自動で評価します。これにより、膨大な手作業が削減されるだけでなく、調達サイクルが加速し、高額な契約における人為的なバイアスやミスのリスクを最小限に抑えることができます。 二つ目は、私たちが「システムの第3の目(サードアイ)」と呼んでいる「インダストリアル・インテリジェンス・プラットフォーム」です。このシステムは、組織がすでに持っているデータレイヤーの上に構築され、稼働中のあらゆる資産をリアルタイムで常時監視します。わずかな異常や基準値からの逸脱を検知した瞬間、直ちに関係者へアラートを発信します。 このプラットフォームの目的は極めてシンプルです。「重大な産業事故を未然に防ぐこと」に尽きます。特定のベンダーに依存するロックインを排除し、不要な複雑さを一切省いた設計にしました。世界で最も過酷な現場のための、インテリジェントな24時間体制の安全監視ソリューションです。現在、複数の主要なインド公共企業(PSU)と導入に向けた具体的な協議を進めています。

ーTuriya 3Dのスキャン技術が「真にユニーク」である理由は何でしょうか?

マンシャ・デヴィ氏: Turiya 3Dが提供するエンジニアリングサービスの中核を担っているのは、「Z&F Imager 5006EX」という極めて希少な3Dレーザースキャナーです。これは従来のスキャナーとは全く異なり、世界で唯一の「防爆型」3Dレーザースキャナーなのです。たった一つの火花が壊滅的な大爆発を引き起こしかねない、石油精製所のようなハイリスクな環境で機能するように特別に設計されています。 実際、この機材は世界を見渡しても10〜15台ほどしか存在しません。当社は、このテクノロジーを所有し運用している、世界でもごくわずかな企業の一つです。このスキャナーを使用することで、産業施設全体を0.1ミリメートルの精度でキャプチャすることが可能になります。これにより得られた膨大な3Dデータセットをもとに、すべての配管、バルブ、構造要素に至るまで完全に再現した物理プラントの仮想レプリカ、すなわち「高精度なデジタルツイン」を構築しています。 これらのデジタルツインは、単なる見せ物(デモンストレーション)ではありません。プラント管理者がメンテナンス計画を立案したり、設備改修のシミュレーションを行ったり、あるいは

これまで不可能だったレベルの精度で資産管理を行うための、極めて実践的な運用ツールなのです。

ー実際の導入成功事例について教えていただけますか?

マンシャ・デヴィ氏: 当社のクライアントリストを見ていただければ、その実績は一目瞭然です。私たちはこれまで、インドを代表する名だたる産業企業に対してレーザースキャンサービスを提供してきました。 例えば、ビシャカパトナムにあるヒンドゥスタン・ペトロリアム(HPCL)の製油所では、極めて重要な設備ユニットのスキャンを実施し、現在その施設の「アズビルト(現状有姿)デジタルモデル」の構築に活用されるデータを提供しました。また、ムンバイのバーラト・ペトロリアム(BPCL)や、インド最大級の民間製油所運営会社であるNayara Energyに対しても、同様のプロジェクトを完了させています。 これらは決して小規模な契約ではありません。最高水準の精度、安全性、そして信頼性が求められる国家規模の大企業との、強固な信頼関係に基づくプロジェクトです。Turiya 3Dがこうした関係を築き、維持できていること自体が、私たちのチームの卓越した能力とプロフェッショナリズムを何よりも力強く証明しています。

ー創業以来、御社はどのような成長を遂げてきましたか?また、特筆すべきマイルストーンについて教えてください。

マンシャ・デヴィ氏: 2018年半ばに事業を開始して以来、当社は着実な成長軌道を描いてきました。世界中の多くの企業がそうであったように、2020年から2021年にかけては新型コロナウイルスの世界的流行による混乱が生じ、当社の歩みも一時的に足踏みを余儀なくされました。 しかし、コロナ禍からの回復は非常に力強いものでした。過去2〜3事業年度において、収益は約4000万〜5000万日本円規模にまで達し、現在も右肩上がりの持続的な成長を続けています。 直近における最も重要なマイルストーンは、2025年5月に「Turiya 3D」を完全に独立した法人として設立したことです。これは、当社の3Dおよびデジタルツイン部門が単なる一事業部の枠組みを超え、独自の市場戦略、顧客パイプライン、そして成長ポテンシャルを備えた独立したビジネスへと成熟したことを明確に示す出来事でした。 現在、これら2つの企業は同じコア経営陣のもとで並行して運営されています。これは、裾野の広いエンタープライズソフトウェア市場と、高度に専門化された産業エンジニアリングというニッチ市場の双方を同時に追求できる、極めて効率的なモデルなのです。

まきチャレ2025への参加

ーTuriya Softechはどのようにしてまきチャレ2025のファイナリストに選出されたのでしょうか?また、この経験からどのようなことを学びましたか?

マンシャ・デヴィ氏: まきチャレ決勝までの道のりは、「最高のチャンスは予期せぬ時に静かに訪れる」ということを改めて実感させてくれるものでした。正直に申し上げますと、私たちは締切直前に応募を済ませたものの、その後は半ばこの取り組み自体を忘れかけていました。

しかし、まきチャレ運営コアチームのSavitaさんからフォローアップのご連絡をいただいたことで、最後までやり遂げようという私たちの情熱に再び火がついたのです。そこからの展開は信じられないほど早く、気がつけばこのグローバルなスタートアップコンテストのファイナリストとして名を連ねていました。 応募を見過ごしかけていた状態から決勝の舞台に立てたことは、私たちにとって本当に素晴らしい瞬間でした。なかでも特に誇りに思っているのは、多様な分野のソリューションが集まる中で、私たちがファイナリストの中で唯一の「純粋なテクノロジー主導型企業」として存在感を示せたことです。 この経験は、日本市場に関する計り知れないほど貴重な知見をもたらしてくれました。文化に寄り添ったソリューションや、自然を尊重するデザイン哲学の重要性、そして先端技術と経済的・社会的ニーズを融合させる人間中心のアプローチである「Society 5.0」という深遠なコンセプトについて学ぶことができました。私たちはまさにこのフレームワークを軸にピッチ(プレゼンテーション)を構成し、産業、地域社会、そして若者たちを結びつける「持続可能な産業イノベーション」のビジョンを提示したのです。

ーピッチでは、具体的にどのような発表をされたのでしょうか?

マンシャ・デヴィ氏: 私たちのピッチは、「持続可能なイノベーション、産業連携、そして若者のエンパワーメントを通じたSociety 5.0の推進」というコンセプトを軸に据えました。これは、見渡す限りの茶畑が広がり、環境に対する強いアイデンティティを持つ「牧之原市」という地域の文脈に、深く共鳴するフレームワークでした。 私たちが提示したビジョンは、単なる技術論ではありません。それは「統合的」なものでした。IoTアナリティクス、AI主導の予測システム、そしてスマートシティ技術を、牧之原の人々、とりわけ次世代を担う若者たちと、統合された持続可能なプラットフォーム上で結びつけることを提案したのです。牧之原のアイデンティティの中核をなす「農業」の側面については、当社が培ってきたIoTおよびインテリジェント・アナリティクスの専門知識を、「予測型農業ソリューション」に活用することを提案しました。その目的は、農作物への脅威(天候不順や病害虫など)に対する早期警告システムを構築し、農家の方々が適切なタイミングで対策を講じられるようにすることです。 さらに、農業向けソリューションについてはM2 Labo社と、スマートシティおよびAIベースのインフラ活用についてはマクニカ(Macnica)社との戦略的パートナーシップも提案しました。このような協業の提案は、シナジーを重んじる当社の姿勢を如実に表しています。すべてを自社単独で抱え込むのではなく、互いを補完し合える最適なパートナーを見出すことこそが重要だと私たちは信じているからです。

将来の展望:日本市場への進出とグローバル展開

ー技術的な観点から見て、自社プロダクトの開発において最も困難だった課題は何ですか?

マンシャ・デヴィ氏: 少し哲学的に聞こえるかもしれませんが、私たちにとって、技術的な課題が「テクノロジー自体の複雑さ」であることは滅多にありません。当社の経験豊富なチームは、これまでも常に難題を解決できる能力を証明してきましたから。

私たちが直面する本当の課題は、私たちが「規律あるシンプルさ(Disciplined Simplicity)」と呼んでいるものです。 技術的に実行可能な無数の選択肢の中から、最もシンプルかつ効果的なソリューションを見つけ出すには、「開発者のバイアス(思い込みや偏見)」に意識的に抗う必要があります。これは、クライアントにとって本当に最適なアプローチよりも、技術的に高度で洗練された手法を無意識に好んでしまうという、エンジニア特有の傾向のことです。 私たちは「シンプルさこそが究極の洗練である」と信じています。同じ課題を解決するのに100通りの方法があったとしても、最もシンプルな方法を見つけ出すには、技術者としての特定の固定観念を乗り越えなければなりません。この絶妙なバランスを保つため、当社では体系的かつ規律ある社内議論の場を設けています。そこでは、特定のアプローチへの偏りを一切排除し、提案されたすべてのソリューションが「ビジネス上の真価」のみを基準に厳格に評価されます。

一方、エンジニアリング部門であるTuriya 3Dが直面する課題はこれとは異なり、より物理的で現場の運用(ロジスティクス)に関わるものです。 何百メートルにも及ぶ巨大な産業施設の3Dレーザースキャンを成功させるには、極めて経験豊富なフィールドエンジニアの存在が不可欠です。彼らは、完全でシームレスなデータセットを構築するために、連続するスキャンの位置がどのように噛み合うかを現場で正確に予測しなければなりません。これは、長い時間と現実世界での過酷な経験を通してのみ培われる職人技のようなスキルであり、当社の競争優位性を守る強力な「参入障壁」の一つとなっています。

ー他のテクノロジーサービスプロバイダーと比較して、Turiya Softechを際立たせている強みは何でしょうか? マンシャ・デヴィ氏: 「顧客中心」や「誠実さ」といった言葉が、残念ながら単なるマーケティングの決まり文句になり果てているこの業界において、私たちが明確に提示している差別化要因は、もっと具体的です。それは「真の柔軟性」にあります。 当社では、あらゆるクライアントが導入しやすい「ベース版」のプラットフォームと、個別の要望に合わせて機能を最適化する「エンタープライズ版」の両方を提供しています。このエンタープライズ版は、クライアントの実際の要件に基づき、機能一つひとつをテーラーメイドで構築するものです。 もし特定の機能が不要であれば、その分のコストを支払う必要はありません。逆に、ベース製品にまだ存在しない機能が必要であれば、当社のチームがそのクライアントのためだけに開発します。 こうした「真の双方向」の信頼関係を築くアプローチは、特に官僚的な調達構造を持ちがちな大規模な産業クライアントに対して、非常に効果的であると実感しています。こうした組織が真に求めているのは、形式的な対応をするベンダーではなく、自分たちの複雑なニーズを深く理解し、その解決のために一歩踏み込んだ努力を惜しまないパートナーなのです。 ー今後の展望についてお聞かせください。現在、どのような計画が進行中でしょうか? マンシャ・デヴィ氏: 現在、Turiya Softechの社内はかつてないほどの熱気に包まれています。革新的な2つのプロダクトである「BitGuru」と「インダストリアル・インテリジェンス・プラットフォーム」がいよいよ市場投入のフェーズに入っており、すでに複数の大手公共企業(PSU)と具体的な導入協議を進めています。

地理的な拡大も積極的に計画しており、ソフトウェアおよびDX(デジタルトランスフォーメーション)部門にとって、日本は最優先のターゲットです。一方で、Turiya 3Dのエンジニアリングサービスについては中東市場、特にオマーン、サウジアラビア、UAE(アラブ首長国連邦)に注力しており、欧州ではすでにイタリアのクライアントが当社のポートフォリオに加わっています。

2026年は、当社にとって真の「飛躍の年」になると確信しています。東京、名古屋、大阪で開催される「Japan IT Week(IT・DX・AI Week)」をはじめ、9月にバンコクで開催される「GASTEC」、マレーシアのクアラルンプールでの重要イベントなど、国際的な業界イベントへの出展予定が目白押しです。 さらに、日本国内への拠点設立も真剣に検討しています。日本独自のビジネス文化において極めて重要な「信頼関係」を築くために、現地に拠点を置くことは、事業を加速させる強力なエンジンになると考えています。

ー2026年に向けて、希少なハードウェア技術と産業用AIという独自の組み合わせは、グローバル展開や市場におけるリーダーシップにおいて、どのような役割を果たすのでしょうか?

マンシャ・デヴィ氏: 当社のビジョンは、一言で言えば「特化型のイノベーターから、グローバルな商業的パワーハウス(強力な企業)への飛躍」です。開発フェーズから大規模な商用展開へと移行する「転換点」をいま確実に捉えることで、複雑なAI技術と、過酷な要件が求められる重工業界とを繋ぐ「唯一無二の架け橋」としての地位を確立しようとしています。 このビジョンの核心となるのが、日本への戦略的な事業拡大です。「マキチャレ2025」でのファイナリスト選出という成果を足がかりに、HPCL(ヒンドゥスタン・ペトロリアム)やBPCL(バーラト・ペトロリアム)といったインド国内の公共企業(PSU)を支えてきた実績を携え、世界で最も技術基準が厳しい市場の一つである日本に挑みます。これは単なる地理的な拡大ではありません。当社の掲げる「リアル・テクノロジー(実用的な本物の技術)」というアプローチが、精度と信頼性において世界最高水準を満たせることを証明するための挑戦でもあるのです。 今後は、希少性の高いスキャン技術とAI駆動型のエンタープライズソリューションを並行してスケールさせることで、産業効率のあり方を再定義していきます。私たちは、現代のソフトウェアにありがちな「機能の肥大化(フィーチャー・ブロート)」を避け、あえて無駄を削ぎ落としたインパクトの大きい組織であり続けることを重視しています。AIが過剰に煽(あお)られる時代だからこそ、現場や工場の最前線で「実際に機能する技術」を必要とする産業界の巨人たちにとって、欠かせないパートナーとなること。それこそが、私たちの描く明確な未来図です。

Turiya Softechは、流行に左右されず「リアル・テクノロジー」を追求し、世界で最も要求の厳しい産業に真の価値を提供する、現代のテック業界では稀有な存在です。開発段階からグローバルな商用化フェーズへと移行し、日本市場へと足を踏み出す同社は、産業インテリジェンスの新たなスタンダードを確立する絶好のポジションにあります。 確固たる基盤と未来への明確なビジョンを持つTuriya Softechが、今後世界の舞台でさらなる革新を遂げ、より大きな高みへと到達することを期待して止みません。

会社概要

Turiya Softech Pvt. Ltd.

設立: 2017年12月

CEO/Founder: Mansha Devi

公式ウェブサイト: https://www.turiyasoftech.com/

所在地: Nascom CoE, Opp. Department of Marine Engineering, Andhra University, Visakhapatnam, Andhra Pradesh, India 530003

お問い合わせ: https://www.turiyasoftech.com/contact-us

企画・監修: 出縄 良人|株式会社CFスタートアップパートナーズ

取材・執筆・翻訳: 難波 凜音|EXPACT株式会社

今月の注目スタートアップインタビュー「株式会社SUN Reality」

「教育×DX」で創る新しい価値。デジタル技術を活用した教育の最前線とは

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本記事では、株式会社SUN Realityの代表取締役 西條さんに、ご自身のご経歴や事業内容、デジタル×教育で実現したい未来についてお話を伺っています。

株式会社SUN RealityはCFスタートアップパートナーズが運営する牧之原チャレンジビジネスコンテスト(まきチャレ2025)で市長特別賞を受賞されています。

本インタビュー企画・記事執筆は株式会社CFスタートアップパートナーズよりEXPACT株式会社が委託を受け、実施しております。

貴社の事業と設立背景について

-本日はお時間いただきありがとうございます。早速ですが、ご経歴と起業背景について教えてください

西條氏:私は1998年に新卒で株式会社JTBに入社し、法人営業などで3年間経験を積んだ後、ベンチャー企業へ転職しました。そこでは主に教育事業の事業部長を務め、「スポーツ×教育」「塾×教育」など、現在の起業に繋がる領域に深く関わってきました。当時から「将来は自分で会社を経営するのだろうな」と漠然と思いながら、社会人経験を積んでいましたね。

その後、教育機関へ転職し、前職での経験を活かして事業開発部の責任者としてVR人材養成学校の立ち上げなどを10年間担当しました。この時、教育業界の最前線に立ったことで、日本の教育現場におけるデジタル化の遅れに強い課題感を持つようになりました。「よりスピード感を持って、勝てるマーケットにしたい」という強い想いが、起業の原点です。

実際に創業したのは2020年3月。ちょうどコロナ禍が始まった時期でした。対面でのコミュニケーションが制限され、デジタルシフトの潮流が一気に加速する中、特に修学旅行が中止になってしまった児童・生徒に向けて「行くはずだった場所をVR体験するだけでも、良い思い出になるのではないか」と考えました。そこで株式会社JTBと業務提携を結び、「バーチャル修学旅行」を提供したところ、全国で15,000名を超える方々に体験いただくことができました。

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西條氏(大阪関西万博の仕事の合間にとった1枚)

事業内容について

-デジタルシフトの潮流にも乗って事業を展開されてきたのですね。では、現在の主な事業内容を教えてください。

西條氏:現在は、全国の学校や教育委員会などの教育機関に向けてサービスを提供しています。株式会社JTBとの業務提携により、弊社のデジタル教育サービスを、JTBの全国の営業ネットワークを通じて教育現場へお届けできる体制を構築しています。 この体制を基盤として、主に3つの事業を展開しています。

  1. 探究プログラム「デジ探360(デジタンサンロクマル)」

1つ目は、実際の働く現場を3D空間で体験できる探究プログラムです。子どもたちが3D空間を通じて現場を気軽に体験し、自ら問いを立てて個人ワークやグループワークを行うことで、楽しみながら探究サイクルを回すことができます。単にプログラムを提供するだけでなく、弊社が学校で直接講師を務めたり、教員研修を実施したりと、子どもたちの学びを最大化するための伴走支援も行っています。

  1. オーダーメイド型教材の企画開発

弊社の大きな柱となっている2つ目の事業が、教育機関の「こういう教材を作って欲しい」という個別ニーズにお応えするオーダーメイド型教材の開発です。例えば、静岡県磐田市では「デジ探360」をご利用いただいた後に、「もっと地域愛を醸成したい」というご要望をいただきました。そこで、消防署や市役所など、地域に密接に関わる施設を3D空間で学べる専用教材を制作しました。このように、「デジ探360」を入り口として、デジタルを組み合わせながら学校や地域に寄り添った教材を開発するケースが多く、弊社の事業の要となっています。

  1. 企業向けVRコンテンツ・イベント企画 3つ目は、上記の事業で培ったノウハウを活かした企業向けの事業です。例えば、雪印メグミルク株式会社の工場見学の一部として、チーズの製造過程を体験できるVRコンテンツを制作したり、周年イベントの企画や映像制作なども手掛けています。

こうした事業を地道に積み重ねてきた結果、2024年以降は大阪・関西万博の教材制作や、愛知県の教員研修を受託するなど、自治体から直接お仕事をいただくケースも増え、社会的な評価も少しずつ高まってきていると感じています。

ー一方的にプロダクトを提供するだけでなく、教育機関が求めるニーズに合わせた教材を提供されているんですね。では、その教材・授業を受けた子どもたちの反応はいかがですか?

西條氏:今日現在まで、教育コンテンツやイベントを通じて約3万人の子どもたちと関わってきました。私たちは「教材を作って終わり」の会社ではなく、実際に現場へ赴いて授業を行う会社です。授業を通しておよそ3万人の子どもたちの顔を見てきました。

私たちが制作した教材や実施した授業で、子どもたちの目の奥に火が灯り、興味関心が醸成されていく瞬間を肌で感じています。同時に、膨大なアンケートデータを分析し、より子どもたちが興味を持ってくれる教材づくりへと還元しています。

特に弊社では、子どもたちの心理的な変化を促す「ARCS(アークス)モデル」を原則として教材を制作しています。これは、米国の教育心理学者ジョン・ケラーが提唱した、学習意欲(モチベーション)を高め・維持するためのフレームワークです。

•Attention(興味・関心)

•Relevance(自分ごと化)

•Confidence(自信)

•Satisfaction(満足)

「授業内容に興味を持ち、自分ごととして捉え、自分にもできると確信し、達成感に満足する」。この一連の流れによって学習モチベーションは劇的に高まります。どのような内容であっても、この原則は絶対に外さないよう意識しています。

-ARCSモデルでは、特に難しいのが2番目の「Relevance(自分ごと化)」であると思います。子どもたちが学びを自分ごと化しやすくするために意識していることはなんですか?

西條氏:おっしゃる通り、教育の肝はまさに「自分ごと化させることができるか」にあります。そのためには、自分たちが慣れ親しんだ地域の施設や環境で学習することが非常に重要だと考えています。

遠く離れた場所の最新技術を体験しても、「すごいね」で終わってしまうことは少なくありません。しかし、地元の施設を通じた学習や、将来なりたい職業の学習など、自分の生活と密接に関わる事象を学ぶことで、一気に「自分ごと」として捉えやすくなります。

私たちが提供するオーダーメイド型教材は、この「自分ごと化」を促す上で極めて有効な手段だと確信しています。

-これまでの事業展開の中で、特に印象に残っている出来事や転機となったエピソードはありますか?

西條氏:実は、メタバースプラットフォーム事業での失敗が大きな転換点となりました。

創業当初、「今後はメタバース空間での教育が進む」と予測し、数千万円を投資して「バーチャルクラスルーム360」という教育プラットフォームを開発しました。しかし、資本力のある大企業との競争には勝てず、そこから1年半ほど赤字が続き、「もう会社が潰れてしまうのではないか」という苦しい時期もありました。

しかし、その失敗を機に「プロダクトアウト」から「マーケットイン」の発想へと転換しました。自分たちの本当の強みである「教育コンテンツの企画・制作」に特化したことで、現在のような継続的な成長軌道に乗せることができました。

ポジティブな転機としては、2023年の磐田市教育アドバイザーへの就任です。最初は「デジ探360」の提案がきっかけでしたが、私自身が教育の本質を深く学ぶ機会となりました。それまでは「汎用的なコンテンツでも十分な学びを提供できる」と考えていましたが、磐田市での取り組みを通じて、「身近な場所での学びこそが、子どもたちの『自分ごと化』を強力に促進する」という真理に気付かされたのです。

これを機に、「探究的な学び支援補助金2023」のサービス事業者として採択されたり、「GREEN×EXPO 2027」の教材開発・普及業務の受託など、会社として大きく飛躍することができました。

まきチャレについて

-エントリーされたきっかけについて教えてください。

西條氏:一番の理由は、「地域発の新しいビジネスを応援する」というコンテストのビジョンに深く共感したからです。 以前から「まきチャレ」の存在は知っており、素晴らしい取り組みだと感じていました。さらに、特別審査員を務められていた野田万起子さんが、実はベンチャー企業時代の先輩だったんです。野田さんから「チャレンジしてみたら?」とお声がけいただいたことが、最終的に背中を押してくれました。

-「地域共創教育施設」を中心にご提案され、見事に市長特別賞を獲得されました。受賞の心境をお聞かせください。

西條氏:まだ具体的な実績や形がない段階での提案だったにもかかわらず、私たちが描くビジョンに共感していただき、このような賞をいただけたことを本当に嬉しく思っています。

私たちは「地域共創教育施設」を、「子どもたちが学び、新たな価値を創出することができる『会社のようなコミュニティ』」と定義しています。現実の社会では、妥協や制約などによって「1+1」が2以下になり、Win-Winが成り立たなくなるケースが往々にしてあります。 だからこそ、相手のWinが先にあるという前提のもと、自分たちのWinも成り立つ。そんな「1+1が3以上になる共創」を生み出せる教育の世界を創っていきたいと考えています。 特に牧之原市は少子化が進行しており、現在、小中学校を統合した9年間の義務教育学校の形を模索されています。この9年間の教育課程で、いかに質の高い教育サービスを提供できるかが喫緊の課題となっています。この重要なタイミングにおいて、弊社の強みであるデジタル技術を用いた探究学習コンテンツなどが、牧之原市の課題解決に大きく貢献できると確信しています。

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今後の展望

-最後に、御社の今後の展望と、事業を通じた社会課題解決への思いをお聞かせください。

西條氏:まず、直近の大きな動きとして、2026年4月に教員のためのプラットフォームコミュニティ『デジタル教育のススメ〜Next Maker』を立ち上げました。事業を通じて多くの子どもたちに関わる中で、彼らの学びを支える先生方へのデジタル支援が不可欠だと確信したことがきっかけです。 このような新しい挑戦も含め、掲げているミッションとビジョンを実現させたいですね。 ビジョンである「5年後に100万人の子どもたちに関わる」を、教材やイベントを通じて必ず達成し、より多くの子どもたちにポジティブな影響を与え続けたいと思っています。

そのポジティブな影響とは、ミッションでもある「全ての子ども達が常にワクワク、ドキドキを感じている」状態を創ることです。少子化など様々な社会課題を前に、未来にネガティブなイメージを抱いてしまう子どもたちも少なくありません。 しかし、「自分たちが主役となる未来には、ポジティブで面白い側面がたくさんある」という前向きなマインドと、高い自己肯定感を持って社会へ羽ばたいていける。そんな環境づくりができるチームを構築していくことが私たちの究極のゴールであり、弊社の事業がその一助になればと強く願っています。

-最後に、読者や社会全体へのメッセージをお願いします

西條氏:「口だけ番長」にならないよう、有言実行で泥臭く頑張っていきます。 私もチームも、「1+1が3以上になるWin-Winの関係」を築くことを常に意識しながら、日々目の前の子どもたちと向き合っていきますので、温かく見守っていただければ幸いです。

本日は貴重なお話をありがとうございました!

“教育×DX”というアプローチが、単なる目新しいデジタル体験の提供を超えて、子どもたちの学びを『自分ごと化』し、未来への希望を育む力を持つことを強く実感させてくれるインタビューでした。 過去の挫折を糧に教育現場のニーズへ徹底的に寄り添う姿勢、そして『1 + 1が3以上になる共創』を通じて子どもたちの自己肯定感を高めたいというビジョンには、教育に対する深い愛情と確かな実行力が宿っていました。 すべての子どもたちがワクワクできる未来を目指し、地域と連携しながら新たな教育のカタチを創り出していく株式会社SUN Realityの歩みに、これからも注目していきたいと思います。

企業概要

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【会社名】株式会社SUN Reality

【URL】https://sunreality.jp/

【設立年月】2020年3月

【所在地】〒101-0051 東京都千代田区神田神保町2丁目32-5 神保町フロント7階

【代表者】代表取締役 西條 康介

企画/監修:出縄(株式会社CFスタートアップパートナーズ)

取材/執筆: 藤本(EXPACT株式会社

「牧之原市チャレンジビジネスコンテスト(まきチャレ)」

牧之原市の地域経済を活性化するため、商工業や農水産業、観光資源を活用し、新たな事業を地域と共に育てていくビジネスプランコンテストです。CFSPはコンテストの運営事務局を受託しており、企画・推進を行っています。

豆知識 AIはホワイトカラーを侵食し、次に現場へ向かう

代表取締役 髙地 耕平

― フィジカルAI時代におけるCVCの戦略転換 ―

2026年、企業の投資戦略は静かに、しかし不可逆的に転換点を迎えている。 CVCには固有の役割がある。外部で起きている構造変化を、自社の「勝ち筋」として翻訳し、実装まで設計すること。その能力こそが、いま最も問われている。

ホワイトカラー領域の「終わりの始まり」

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まず押さえるべきは、ホワイトカラー領域で起きている構造変化だ。 2026年、AIは単なる業務効率化ツールではなく、「業務そのものを置き換える存在」へと進化した。金融・バックオフィス・カスタマーサポートといった領域では、AIエージェントが自律的にタスクを処理する段階に入りつつある。ServiceNowは2026年4月、「AIエージェントが人の役割そのものを代替する」と宣言し製品を全面刷新した(※1)。

SBIホールディングスの北尾会長は同年3月、「よほど優秀でなければ採るな。AIで代替できる」と採用の大幅抑制を明言した(※2)。これはもはや個別事例ではない。企業行動として表に出始めたシグナルだ。

企業側の動きも構造的だ。ノーコード・ローコードの普及により、かつてスタートアップが担っていた「業務改善ソフトウェア」は、大企業自身が内製できる領域へと変わった。東京都は2026年4月、約6万人の都職員がコードを書かずにAI活用アプリを構築・運用できる内製プラットフォームを本格稼働させた(※3)。行政でこれが実現できるなら、民間企業での展開はより容易だ。国内ノーコード・ローコード開発市場はすでに年間約1,000億円規模に達し、2029年には1,800億円への拡大が見込まれている(※4)。 この結果、何が起きているのか。スタートアップにとって、ホワイトカラー領域の参入余地が急速に縮小している。

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世界には21万社を超えるAI企業が存在し、資金はメガラウンドを形成する一部企業へ集中している(※5)。機能追加型のSaaSでは差別化が難しく、AIをコアに設計した「AI-native企業」が既存市場を侵食する構図が加速している(※6)。国内CVC投資においてもAI・データ分析関連が全体の34%を占め、前年同期の29.5%から拡大した一方、投資件数を絞る「少数精鋭」へのシフトが顕著になっている(※7)。 つまり、CVCにとって「従来型AI投資」は、もはや再現性の高い戦略ではなくなりつつある。

次の戦場は「フィジカル」を持つ領域

では、どこに機会があるのか。答えは明確だ。ブルーカラー領域である。

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建設、製造、農業、物流、介護。これらの分野には三つの共通点がある。第一に、深刻な人手不足。第二に、作業環境が非構造的であること。第三に、「身体性」が不可欠であること。AIが最も苦手としてきた領域が、同時に最も大きな課題を抱えている。このギャップこそが、新たな市場を生む。

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数字を見れば、その深刻さは一目瞭然だ。日本の生産年齢人口は2026年時点で約7,374万人と前年比21.6万人減少しており、減少は今後も加速する(※8)。建設業の欠員率は5.4%と全産業ワースト水準。製造業の技能職不足は2040年に112万人規模に達するという予測もある(※9)。一方、土木従事者や自動車組立従事者の現時点における自動化率は0.0%だ(※8)。 つまり、「課題は巨大で、解決手段はまだない」という最高の市場条件が整っている。

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フィジカルAIという新しいインフラ

ここに登場するのが「フィジカルAI」だ。

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AIをロボティクスやセンサーと統合し、「見て・考えて・動く」能力を持たせる技術。2025年までは概念実証が中心だったが、2026年は明確に転換点となった。三井住友DSアセットマネジメントの「2026年注目投資テーマTop10」では物理AIが1位、ヒューマノイドが2位にランクイン(※10)。市場規模は2026年時点で約1,300億ドル(約19兆円)、年平均成長率は45%での拡大が見込まれる(※11)。

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グローバルでは構造的な動きが同時進行している。NVIDIAはBoston Dynamics、Figure AI、ファナック、川崎重工など世界主要ロボティクス企業と一斉に連携し、200万人のロボット開発者と1,300万人のAI開発者を自社エコシステムへ取り込む戦略を推進している(※12)。VCのEclipseは2026年4月、製造・ロボティクス・防衛特化のフィジカルAI専門ファンドとして約13億ドル(約2,080億円)を設立した(※13)。国内でも、ジャパネットとペガサス・テック・ベンチャーズは共同CVCを300億円規模に拡大し、Physical AIを明示的な投資領域に加えた(※14)。 重要なのは、これが単なる技術トレンドではないという点だ。2026年3月、日本政府はデジタル産業戦略を改定し、フィジカルAIを重点分野に明記した(※15)。官民合わせて5年で1兆円規模の支援が打ち出され、産業構造そのものを変える国家の意志として位置づけられている(※16)。

CVCの勝ち筋は「3つのレイヤー」にある

では、CVCはこの変化にどう向き合うべきか。

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前提として、正面衝突は避けることだ。AIモデル開発やロボット本体の競争は、すでに巨大資本の戦場だ。ここに参入するのは現実的ではない。 代わりに狙うべきは、以下の3つのレイヤーだ。

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レイヤー①:ハードウェア周辺・部品領域 ヒューマノイド・産業ロボット市場が拡大するということは、それを動かす部品・モジュールの需要が爆発することを意味する。精密減速機、小型モーター、センサー、制御チップ -これらは「どのロボットメーカーが覇権を握っても自社製品が使われる」という、ASML型の盤石なポジションだ。日本企業が世界シェアを持つのはまさにこの領域であり、CVCがこの周辺に張ることは、親会社の強みと直結する投資設計になる。

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フィジカルAIを動かすための計算能力の拡大は、電力供給と冷却能力という物理的制約を顕在化させており、電源・冷却技術のスタートアップも確実に需要が増大するボトルネック領域だ。 1777525089_image44.png

レイヤー②:現場データプラットフォーム フィジカルAIの競争優位の源泉はデータだ。製造・建設・農業の現場で蓄積されたリアルワールドデータは、ロボットAIの学習に不可欠な「最高品質のデータセット」として世界が注目している。

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三菱総合研究所も「フィジカルAI時代に日本が勝つ鍵はデータ戦略だ」と指摘する(※17)。日本の製造現場に眠るデータを収集・標準化・流通させるプラットフォームは、今最も競合参入障壁が高い領域の一つだ。現に国内のアイエル社は「現場データを制するものがフィジカルAIを制する」という理念のもと120億円規模の投資を2026年4月に受けた(※18)。 レイヤー③:実装・統合設計 最も見落とされがちだが、CVCが最も付加価値を発揮できる領域がここだ。スタートアップの技術と自社事業部をつなぐ「統合設計者」としての役割である。

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どの事業部が責任を持つのか。成功の定義は何か。導入後の発注条件はどうなるのか。これらを投資前から明確にすることが、技術を現場に実装するための必要条件だ。CVCの役割は「財務投資家」から「統合設計者」へとシフトしつつある。

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フィジカルAIスタートアップにとって、大手事業会社の「現場」と「発注」へのアクセスは、VCの資金と同等かそれ以上の価値を持つ。

「ネオ・ブルーカラー」の時代へ

この変化は、人材像にも影響を与える。

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AIがホワイトカラー業務を代替する一方で、現場の価値はむしろ高まっている。2026年3月、高度な技能と経験を持つとび職人の月収が100万円を超えるという記事が大きな反響を呼んだ(※19)。これは単なる人手不足による賃金上昇ではない。「AIに代替されない技能」と「AIを使いこなす能力」を兼ね備えた人材の希少性が、圧倒的な市場価値を生み出しているという構造的変化の表れだ。

いま起きているのは、「ホワイトカラーの高度化」ではない。「ブルーカラーの進化」である。 現場知識とAIリテラシーを併せ持つ「ネオ・ブルーカラー」が新たな中核となる。日経ビジネスはこの人材を「AI武装で一騎当千」と表現した(※20)。CVCとして投資先スタートアップを評価する際、「この会社のプロダクトはネオ・ブルーカラーを生み出すか、それとも依存させるか」という問いは、プロダクト設計の本質を見抜く有効な軸になる。

設計できる組織だけが勝ち残る

2026年は、単なる技術革新の年ではない。産業の重心が移動する年である。

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ホワイトカラー領域はAIによって再編され、スタートアップの参入余地は縮小する。ブルーカラー領域には巨大な未解決市場が広がる。そしてフィジカルAIが、その解決手段として現実になり始めている。 CVCに求められるのは、この変化を「ニュース」で終わらせないことだ。どこに需要が生まれるのか。自社はどこで勝てるのか。投資後に何を提供できるのか。これらを言語化し、実装まで設計できるかどうか。 未来を当てる必要はない。構造を読み、自社に翻訳し、実装を設計すること。その三段階を一気通貫で動ける組織だけが、この変化の中で勝ち残ることができる。

髙地耕平|EXPACT株式会社 CEO スタートアップ資金調達支援・外部CFO SVSA理事長 / エコシステムビルダー

参照・出典 ※1 ServiceNow AIエージェント宣言(2026年4月) https://businessnetwork.jp/article/34196/

※2 SBI北尾会長 採用抑制発言(FIN/SUM 2026)淘汰は現実:ホワイトカラーの市場価値を爆上げする https://genai.hotelx.tech/ai

※3 東京都「A1(えいいち)」6万人内製プラットフォーム https://www.hexabase.com/column/ai-insourcing-democratization-tokyo-final

※4 国内ノーコード・ローコード市場規模推移 https://it-trend.jp/no-code_low-code_development/article/845-5703

※5 世界AI企業21万社超・資金集中の実態 https://thunderbit.com/ja/blog/ai-startup-stats

※6 AI-native企業による既存SaaS侵食 https://forbesjapan.com/articles/detail/88907

※7 国内CVC投資トレンド2026(AI・データ34%) https://media.thecfo.ai/column/archive/9414

※8 生産年齢人口減少・建設業欠員率・自動化率0.0% https://note.com/aifounder/n/n7321a78e534e

※9 2040年製造業技能職不足112万人予測 https://business.nikkei.com/atcl/NBD/19/special/02403/

※10 三井住友DSアセット「2026年注目投資テーマTop10」 https://note.com/engawasaron/n/n5359972381f9

※11 フィジカルAI世界市場規模・CAGR45%予測 https://www.gii.co.jp/report/fmi2005196-global-physical-artificial-intellligence-ai-market.html

※12 NVIDIA グローバルロボティクス企業連携発表 https://blogs.nvidia.co.jp/blog/nvidia-and-global-robotics-leaders-take-physical-ai-to-the-real-world/

※13 Eclipse VC フィジカルAI特化ファンド13億ドル https://uravation.com/media/eclipse-vc-physical-ai-manufacturing-defense-fund-2026/

※14 ジャパネット×ペガサス CVC300億円拡大・Physical AI投資 https://news.livedoor.com/pr_article/detail/31001384/

※15 経産省 デジタル産業戦略改定・フィジカルAI重点化 https://www.sbbit.jp/article/st/183026

※16 官民5年1兆円支援・ソフトバンク・NTT連携 https://www.sbbit.jp/article/cont1/177512

※17 三菱総研「フィジカルAI時代のデータ戦略」 https://www.mri.co.jp/knowledge/opinion/2025/202511_3.html

※18 アイエル社「現場データ」120億円投資(2026年4月) https://www.venturesquare.net/jp/1078220/

※19 とび職人 月収100万円超(2026年3月) https://news.yahoo.co.jp/articles/0e6333b09e560f7c985825b1e3cf9f4db0803032

※20 日経ビジネス「ネオ・ブルーカラー・AI武装で一騎当千」 https://business.nikkei.com/atcl/NBD/19/special/02403/

(以上)

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